作り手の顔が見える義歯作り ブランド化狙い拠点
2011年11月17日【日本経済新聞】掲載
作り手の顔が見える義歯作り ブランド化狙い拠点
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差し歯や入れ歯、歯列矯正装置などのお世話になっている人は少なくないだろう。
これらの歯科技工物はどこでどうやって作られているかご存じだろうか。
成田デンタル(千葉市)は作り手の顔が見える取り組みを義歯作りに取り入れた。
JR東京駅から歩いて数分のオフィス街。
カフェのような外観の店舗をのぞくと、制服に身を包んだ人が義歯を片手に一心不乱に作業に取り組む光景に出くわした。
中に入ると机といすの小さなカフェスペースがあり、そこからガラス越しにメーンとなる作業スペースを見ることができる。
歯科医師や患者などの見学を受け入れるこの店舗は、同社が開いたばかりの歯科技工所「ラ・シーマ八重洲」だ。
広さは60平方メートル強とコンビニエンスストアより少し小さいぐらい。
国家資格である歯科技工士の有資格者3人を置き、義歯を焼く窯など数百万円する高価な機材が所狭しと並ぶ。
最大の特徴はインプラントやセラミック製の義歯など、健康保険の適用外で患者の自費負担となる高級な歯科技工物を専門に受注することだ。
ラ・シーマの責任者である平塚敏隆・特殊技術課長は20年超のキャリアの「職人」。
義歯の土台となる部分に約20種類のパウダーを液体で溶いて筆で塗りつけていく。
色を再現すると同時に歯の形も筆で作り上げる。
「単に白ければいいというわけではなく、患者さんが持っている天然の色に近づける必要がある」。
平塚さん自身が歯科医に出向いて、患者に撮らせてもらった歯の写真と照らし合わせながらの地道な作業で仕上げる。
通常のものに比べてかける時間は2倍程度。
技工物の単価は10万円単位のものが主流となり、同社が提携する他の技工所で作る場合の2~3倍になるという。
同拠点の初年度売り上げは3000~4000万円を目指している。
今後、ラ・シーマをブランド化して富裕層を開拓する戦略を描く。
まずは都内で協力してくれる技工所で同ブランドを展開してもらう方針。
全国展開や海外での拡大も視野に入れる。
初めての拠点をわざわざ東京の都心部に置いたのは首都圏はもちろん、全国から歯科医師や技工士、患者等などを呼び込む狙いがある。
ラ・シーマには別の狙いもある。
「実は歯科技工士業界は深刻な若手離れに直面している」(石川典男社長)。
歯科医師間の競争激化で発注する技工物も低価格化が進み、技工士の勤務時間が増える割には収入が上がらないという。
業界では歯科技工士の離職率は20代で約8割近くにのぼるともいわれる。
経験を積んだ職人になれば、作品に対する相応の報酬が得られる...。
「こうした将来像を示して、技工士として踏みとどまってもらうことが若手離れに歯止めをかける第一歩になる」と石川社長は強調する。
