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歯科医療のための健全経営を考える

2010年4月 6日【日本歯科新聞】掲載

歯科医療のための健全経営を考える

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[特別対談]
デンタル・サポート社長 寒竹郁夫氏
成田デンタル社長 石川典男

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多くの若者が人生の新たな門出を踏み出す4月を迎えた。しかし、日本経済は長引く景気低迷にあって各業界とも強まる先行きの不透明感に不安を募らせている。
歯科医療を取り巻く環境にも景気低迷の波は確実に押し寄せ、経営的に苦戦を強いられている歯科医院や歯科技工所も少なくない。
そうした中、今年の初め「千葉県元気印企業大賞」を受賞した訪問歯科診療や介護施設等を運営するデンタルサポートの社長で歯科医師の寒竹郁夫氏と、歯科技工の流通システムを革新したことにより、昨年末に「グッドカンパニー大賞」特別賞を受賞した成田デンタル社長の石川典男氏に、健全な経営発展を続けるためのノウハウを語ってもらった。


■どう変わる日本の歯科医療
―歯科の国民医療費はここ10年減少傾向にあり、特にここ数年は2兆5千億千台で推移しています。この間、歯科医院数は増加しているので1医院当たり平均医業収入は確実に減少していると思われます。
日本の歯科医療は大丈夫でしょうか。


寒竹:
数字的にも巷間聞く状態から推察しても厳しくなているのは確かでしょう。
しかし、政府は医療・介護・健康関連を成長産業と位置付け日本発の革新的な医薬品、医療・介護技術の研究開発やアジア等海外市場への展開促進を国家戦略としてうたっています。特に歯科は医科と違い、職人技的な要素が関係するので、売れる技術をいっぱい持っています。
医療で世界に勝ち残っていくには、歯科は非常に有利ではないでしょうか。国内しかも保険だけしか見ていないと「年収300万円」ということになってしまうのです。
上海に3時間で行ける時代です。国と連携し世界に風穴を開けていけば、歯科医療、歯科技工には莫大なマーケットがあるのです。


石川:
毎年この時期になると500~600人の4年制大学の学生と面接するので、「歯医者は好きか」と聞くことにしています。「好き」と応えるのは100人中1人か2人です。
矯正治療の経験者などは歯2、3年、歯科医院通いを続ける間に歯科医師が好きになるようです。
世界を視野に考えなければいけないのは確かですが、歯医者嫌いでない人を増やす努力をすることで、来院患者数を1.5倍位に増やすことが出来るはずです。
国内だけでも特に予防や審美はこれからの分野ですし、自費率が上がれば歯科技工だけでも市場は1兆円規模まで伸びると思っています。



―――日本の歯科医療ブランドを海外に売るというのは夢のある話ではありますが。


寒竹:
日本の歯科界活性化のためには国家戦略を察知して業界が先に立って推し進めることが大事です。歯科技工が入っていけば必然的に歯科医療が入っていくことになります。
今年2月、歯科技工のオートメーション化と海外戦略の拠点として千葉県内に新しい歯科技工所「ヒカリ」を開所しました。CAD/CAMシステム等の機械化を推進することで、国内歯科技工所の3Kからの脱出を図り、世界から歯科技工物を受注し、輸出します。
まずはアジアの富裕層をターゲットに考えています。


石川:
1千人以上の歯科技工士と取り引きがあります。歯科技工物を中国に発注したら、彼らを路頭に迷わせることになります。
また、高度教育を受け、国家資格を持つ日本の歯科技工士をこれ以上減らすことは国家戦略的にも大きな損失です。日本の高度高品質な歯科技工を海外に輸出すべきです。
将来、ヨーロッパに営業所を開設する予定です。そのために英会話の堪能な社員を雇用し、歯科技工の勉強をしてもらっています。海外でも「成田デンタル」のやり方で運営します。市場としてヨーロッパの次にはアジアを考えており、中国人なども雇用し、その人たちにも歯科技工の勉強をしてもらっています。



■医療と経営の分離

―――医療と経営の分離は前々から必要だとされていましたが、グローバル化の時代でその方向はもはや避けて通れなくなりましたね。


寒竹:
株式会社が医療経営をできるようにしなければいけないということは10年前から提言していました。歯科医師も本当の意味での経営者になっていかないとこれからの医院経営は難しいでしょうね。歯科医師は大学6年間で治療の技術的なことは学びますが、倫理というか人間としての根本的な勉強をしないまま世の中に出ます。スタディーグループで技術を学ぶよりも経営者としての本質を学ぶ勉強会などに参加する方が大事だと思います。


石川:
クレドを作って歯科医院を十数軒経営している、私が人としてまた経営者として尊敬する歯科医師がいます。そのクレドには「地域社会に貢献する」などといった良いことがいっぱい書いてありましたが、スタッフが良くなるための経営の一言がなかったのです。
「盛和塾」という経営塾の会合でそれを見た同会主催者で京セラ名誉会長の稲森和夫氏は「これ欠陥商品やな」と一言で指摘しました。京セラの企業理念に書かれているのは「全従業員の物心両面の幸福」です。スタッフみんなが安心して働けるということが大事です。
自分が安心できるから患者さんのために奉仕ができ、患者さんにも喜んでもらえます。医療は経営ではないと言われていますが、スタッフ全員が経営の心を持たないと患者さんに喜んでもらえる医療の提供できないのではないでしょうか。


寒竹:
医療法人は別にして就業規制や厚生年金、失業保険などすべて完備されている歯科医院は少ないのではないでしょうか。医療従事者はスタッフの物心両面の幸福を考えた経営とは何かをまず学ぶ必要があります。幹を支える根の部分をしっかり学ばないと幹も枯れてしまい、花も咲かなくなります。


石川:
スタッフ一人ひとりにトップの目が行き届いている医療機関には患者さんが来ています。



―――創業当初からそうした見方や考え方があったのですか。それとも何か変わるきっかけがあったのですか。


寒竹:
医療法人を設立したのは平成3年です。そして訪問歯科診療を事業化し、全国展開して上場しようと考え、デンタルサポートを設立したのが10年です。
創業時、当社の株を20%持っていた今はなき、某大手介護、人材派遣企業が当社を買収しようとしました。断ったら幹部15人を全部引っこ抜かれ、競合会社を作られました。12年のことです。
「寒竹とその某企業の社長は医療を食い物にしている」というニュースが日本全国に広まり、歯科医師や歯科衛生士も半分以上が辞めました。その上に銀行の紹介で入ってきた管理部長に同じようなことをされ、資本金を競合会社に引き抜かれました。
自分はどこかに欠陥があると自覚し、企業理念を確立し、自分の腹に落とし込み、全社員に浸透させてから経営的にV字回復しました。


石川:
私の会社は22年前に借金だらけで再スタートしました。借金を返済するために売り上げ至上主義で、営業を歩合制にし、外注先のラボの支払いを確実にすることで、売り上げを伸ばし、5年で借金は返済できました。しかし、社員が50人ほどになった時、「私は創業時に小さいNの文字を七つ重ねてNのマークの『成田』という社名をつけ、世界一の会社を目指したのに、このままでは世界一になれない」との思いから規制を次から次へと作り、4大新卒者を入れて会社の中を一変させました。そのときに研修のための教科書や経営理念も作りました。
組織の大きさに関係なく、経営理念は大事です。



■プレッシャーをかける
―――理念を腹に落とし込むと言われましたが、どのように落とし込むのですか。


寒竹:
自分自身にプレッシャーをかけます。
数字が分かりやすいので、「売上100億円をいつまでに達成する」ということを自分だけでなく、幹部に言って同じ境地にさせます。会社は一人では動業界協会にどっぷり漬かってしまうのは良くない。外からどのように見られているかという事を認識した上で理念を確立して、腹に落とせば、何を言われてもぶれなくなります。
そのために石川社長は「盛和塾」と言いましたが、私の場合は倫理法人会の会合に出て刺激をいただいています。日々勉強ですね。


石川:
自分を追い込むことですね。
各営業所の所長たちも、私が社員に言っていることを知っているので、やらないと社員から信用されなくなります。最初は自分をだましだましやるのですが、それが習慣になり、いつの間にか普通になります。
社長としての自分の目標は、例え2年売り上げがゼロでも、給料を払い続けられる会社にすることです。だから利益も上げる。利益が上げれば半分は税金として収めるので、社会貢献にもなりますし、内部留保ができ、社員の安心、安定につながります。
相手のために考えると利益を上げてはいけないような感じがしますが、実は違います。だから「適正な利益を上げないといけない」ということを明言します。決算書も全員に見せるので、内部留保が少ないといわれたら困るので、やるしかない。
自分にプレッシャーをかけるしかないと思っています。



※「千葉県元気印企業大賞」とは、新しい千葉県の産業創造と、各企業の活力アップの一助になることを願い、平成7年度から千葉県産業界を対象に新技術、新製品開発、ユニーク経営などを通じ、活力溢れる経営で時代を先取りする中堅・中小及びベンチャー企業を広く表彰するもの。
わが国の産業基盤を支える地域企業の発展に役立て、一層の弾みをつけるのが目的。



※「グッドカンパニー大賞」とは昭和42年に創設され、全国の優良な中小企業を発掘・顕彰することを通じて日本経済に寄与することが目的。
表彰企業は、第1回の京都セラミック(現:京セラ)を始めとして累計551社にのぼり、うち66社が株式公開を行うなど、今日ではわが国の有力な企業となった企業も少なくない。