営業力で歯科技工に旋風
2010年1月 8日【千葉日報】掲載
[画像クリックで拡大]
入れ歯や差し歯を作る歯科技工士の多くは自ら歯科医院を回り仕事を取る。「だが、職人が営業もやることに違和感があった。それぞれプロがやった方が合理的」。
その"片方のプロ"を自任する成田デンタル(千葉市美浜区)の石川典男社長(53)は力説する。
歯科用機器販売会社の営業マンから独立し、医院と歯科技工所を橋渡しする新ビジネスを確立。
国内屈指の歯科技工関連企業にまで同社を育て、業界に旋風を巻き起こした。
「微妙な相性」が求められる歯科技工の世界。
技工士によって得意分野はさまざまで、医師が求めるものもそれぞれ異なる。
同社は120の提携技工所と3400の取引医院という広範なネットワークを構築し、最適な両者を仲介する。
さらにネットワークで得た情報を生かし「こんな治療法はどうですか」と医師に提案型の営業ができる点も、医師の指示通りに作るだけの「技工所の営業」にはない強みだ。
陶製差し歯「ホワイトクラウン」はその強みを発揮した例。
通常の陶製の差し歯は約8万円。一方、保険が効くプラスチック製は約1万円と開きがある。
同社は複雑な色付けをしないなどの合理化で約4万円の陶製の歯を企画開発し、提携技工所に製造を依頼。ヒット商品になった。
「丈夫な陶製を入れたいが8万円は高い」と訴える患者の声を営業網からつかんでいたことが製品化に結びついた。
今や年商50億円を稼ぐ同社も、一度どん底に落ちた経験がある。
当初目指したライン製造で安価な技工物を作るというモデルが行き詰まり、創業から数年で経営危機に。
銀行取引が停止され、社員の給料も取引先への支払いも滞った。
さらに高利貸しからの借金1億円を残したまま89年、創業仲間の前社長が失踪。
会社を引き継いだ石川社長が悩んだ末に行き着いた結論が、「相手目線の仕事」だった。
苦しい中でも、外注先への期日前の支払いを徹底。
やる気のある社員に応えようと業績給の仕組みも整えた。
気づけば取引先からも社員からも信用を得て、会社が回り始めていた。
「自分の収入や名誉など『自分のため』が創業の動機。これが間違いだったと危機になってやっと気づいた」
「業界を1兆円産業へ」という夢がある。
業界の成長が患者、医師、技工士のいずれにもプラスだと信じているからだ。
「米国と比べ、歯の健康への意識が低い日本にはまだまだ歯科にかかるべき人はいる。そうした人たちを啓発したい」。
窮地で得た理念「相手のため」を胸に石川社長は走り続ける。
(平口亜土)
